(080422の続き)

十代目の婚約者は、俺の家みたいな良家のお嬢様で、所謂政略結婚で来た女だった。甘いは知っていても、マフィアの世界の酸いは知らないような箱入りだ。始終にこにこしていて嫌々来ているかんじではなく、十代目のことも気に入ったみたいだ。俺にも笑顔を向けてくれるが、俺はそれを見るたびにイライラしてしまう。俺の心を知ってか知らずか(多分後者だ)よく話しかけてくる。
「獄寺さんは綱吉さんと長いお付き合いなんですか?」
「…ああ」
長いなんてものじゃないし、普通の付き合いでもない。でもこう答えるしかないだろう。なにせ相手は俺と十代目が今まであんな関係だったなんて微塵も知らないだろうし。それ以前に話しかけられるのがイライラするというのが、そっけない返事の大半の理由を占めている。俺は自分が、こんなに嫉妬深い女みたいなやつだったなんて今まで知らなかった。
「そうなんですか、じゃぁ幼馴染みたいな感じなんですね」
「…」
もともと女に対してそっけない態度をとっていたのがよかった。これで彼女と十代目にあからさまに嫌がられていると思われなくて済む。しかしどんなにそっけなく、突き放したような態度をとってもこの女には効かないようだ。というかお喋りなんだろうか。十代目とはティータイムのとき位しか喋らないのに(十代目は忙しいから話せないというのもあるけれど)俺のときはお構いなしに話しかけてくる。それに対して俺は嫌とも言わないかわりに、ああ、とかその位の聞いているのか判らない短い返事しかしない。それでも彼女はにこにこしながら傍にいる。
「あ、落ちましたよ。はい」
「…Grazie」
俺の手からこぼれた書類を丁寧な動作で拾ってくれた。
こんなことして、何になるっていうんだ。俺が十代目の側近の中でも右腕だから、中学からの幼馴染だから気に入られたいとでも?十代目の高感度をあげたいとでも?そんなの、俺にとって迷惑以外の何者でもないのに。


それでも大切な人の大事な人だから








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全然ツナ獄じゃない…。なんか隼人の夢小説みたいだ…けれども!はやと→ツナでみてください。そういえばオリジナルキャラみたいなのを入れるのは初めてです。
婚約者さんについて@良家のお嬢様。いつでもニコニコ。当たり障りの無い感じ。深読みできない。我儘お嬢様ではなく、いい子なお嬢様。