dolce

吐き出した白い煙が青空に飲み込まれていった。
「獄寺君、ちょっと吸いすぎじゃないかな?」
屋上で十代目と2人きりの休み時間、俺がいつものように煙草を吸っていたら言われた一言。
「あ、すいません!煙草お嫌いでしたか?!」
「いや、そうじゃないけど…」
俺の手の先からふよふよと白煙があがる。それをじっと見つめる十代目。俺は十代目がてっきり煙草の煙が嫌なんだと思ってたから、言葉に詰まった。そうしているうちにも白煙は大空に飲み込まれていく。
「煙草の吸いすぎは体によくないなって」
十代目は苦笑いして小首をかしげた。そうか、十代目は俺の健康を気にしてくださったのか!嬉しすぎる…。
「すみませんでした!十代目!俺の健康を気遣ってくださって…」
「そ、そんなたいしたことじゃ…」
俺はすぐさまぎゅっと地面に煙草を押し付けた。もう白煙は上がらない。しかしなんだか口寂しい。我慢できないわけじゃないが、なんだか無性に手持ち無沙汰な感じだ。俺は無意識に唇を触っていたらしく、十代目の手がそこに触れる。
「獄寺君?」
「…あ、いえ、何だか口寂しくって…」
煙草をいつも吸っているのはいつでもダイナマイトが使えるようにというのもあるが、やっぱり癖になっているんだろうな。
「ならコレあげるよ」
「?」
手出して、といわれて条件反射で出した手の上には白地に赤い模様包装にくるまれた飴玉。食べて食べて、と十代目に言われるがままにその中身を口の中に放り込む。甘いいちごの味が広がった。
「おいしい?」
「はい」
ちょっと甘いがこれはこれで嫌いじゃない。それに十代目がくれたものだし。いつもよりおいしく感じる。
「ふぅん、じゃぁ俺も食べてみようかなー」


ちゅ


口の中が突然甘みを増した気がした。十代目の舌が俺の口内を余すとこなく味わっていく。いちご味の飴が急に溶けていくんじゃないかと思った。
やっと唇が離れた頃には、さっきまでの煙草のにおいはもうなくなっていて、代わりに甘ったるい香りが立ち込めていた。
「ごちそうさま」

この飴なかなか美味しいね、と名残惜しそうに唇を舐める綱吉は十年後の姿をこっそり覗かせていた。









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たまには甘いだけの話も書きたくなります。でも書きにくかったです。所詮切ない系専門か…。ちなみにツナが持ってた飴はランボを黙らせるの専用の飴ちゃんです。丁度ぶどう味がなかったということで。あ、飴食べたくなってきた…駄菓子屋の大きいやつ…アニメでランボが正ちゃんの回のとき貰って食べてたようなやつ…周りにザラメがついてる…(。・ρ・)