どんどん欲張りになっていく (10 years later)


「たりないよ」


愛する十代目のベッドで一夜を明かそうとしていたときだった。いつもみたいに優しく押し倒されて、近づく十代目の顔。距離が0になったところで最初はそっと触れるだけのキス。少し離れると丁度開いた瞳と十代目のそれが合わさってにっこり笑顔の交換。それがはじまりの合図。その後はまた飽きるほどキスをしてから次に進むはずだった。実際途中まではそうだった。
急に十代目に言われて、俺はどうしたらいいのかわからなくて。でも俺だけに注がれる十代目の視線は真剣そのもので、もっと困ってしまった。


「あ、あの…十代目?」
「綱吉」
そんな目で言われては逆らえない。
「つなよし…」
「なに?隼人」
「あの、何が足りないんですか?」


「隼人がたりないんだ」


は?と俺は真剣に訴えるじゅうだ…いや、綱吉に聞き返してしまった。これじゃあ綱吉の機嫌はますます悪くなるなんてわかってたはずなのに、条件反射とは恐ろしいものだ。


「だーかーら、隼人がたりないんだってば」


いいながら綱吉は俺の首元に顔をうずめてきた。ふわふわのくせっ毛がくすぐったい。今日は甘えたいんだろうか?掴みきれない彼の心なら俺だってもっと知りたいと願ってる。自分にかかる綱吉の体重で存在を感じていても、本当はひとつのなにかになりたいなんて思ったりもする。


「隼人は俺が足りなくない?」


首元に擦り寄ってきてたかと思っていたのに、突然耳元で囁かれてドキリとした。いつもとは違う低く甘い声。俺はこの声に弱い。返事する前に耳をぺろりと舐められて、俺はやっとのことで答える。


「た、りない…」


こうなったら降参するしかなかった。早く降参しないと後で大変なことになりそうな気がしたし、愛しいこの人の言うことならなんでも聞いてあげたいとなんでも叶えてあげたいと思っているから。


「うん。そうだよね。俺ももっと隼人が欲しくてたまらないよ」


俺の返事を聞いてがばっと起き上がり、にっこりと返事する綱吉はやっぱりそうだよね、と笑顔で俺のシャツのボタンをぷちぷち外しはじめる。




こうやって俺はこの人に感情を左右されて、あげくに食べられてしまう。それは日々エスカレートしていって頂点が見えないほどに。俺だっていつもあなたが足りないと思ってるけど、言ったら止まらなくなりそうで。そしたらどうなってしまうのか怖くていえないだけだ。




現状に満足することなんて永遠にないのかもしれない。











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ちょっといつもの文に反省して、頑張って書いたので内容はどうでもいいとして…よくないけどもね、ずっと隼人視点で書いたからツナの想いがすごい浮かんできて書き足りなかった…いつもは、第三者視点and主人公にしたい人の想い or 登場人物の誰かの視点andその人の想いっていう感じで書いてるのね、実は。でもいろんな文を読んできてやっぱりひとつの視点で書かないと読みにくいのかなぁとか、まとまらないかなぁと思って、今回チャレンジしてみたんだよね。たとえばRLの時にわざとリボーンからのはひとつも書かないでずっとランボだけとかはやったことあるけど、やっぱりキャラによって感情移入しやすくてなおかつそれが溢れそうになるとどうしても全部書きたくなるんだよね〜…。
逆に全部見えないほうがいいのかも…?