いつも一緒でいたいよ (10 years later)


メイドが廊下を歩いてくる気配で目が覚めた。
しばらくして気配の主がドアをノックした。


「失礼します。綱吉様、おはようございます」
「ああ、おはよう」


カーテン開けますね、と入ってきたメイドはスカートをふわふわさせながら窓に寄っていく。
俺はまだ重い瞼をこすりつつ起きてバスルームへ向かった。町の中心から外れた、森の中にあるこの屋敷ではこの時間はいつもうっすらと霧に包まれている。そのため少し肌寒い。シャワーを浴び、あのころとあまり変わらないな、と水滴のついた顔を鏡越しに見る。タオルを腰に巻いて部屋に戻った。
メイドによって既に片付けられたベッドには、真新しいスーツやらがおいてあった。そのスーツに着替え終わったころ、メイドが朝食を運んできた。




こうしていつもとかわらない朝を迎えた。






新聞を読みながら朝食を終え、食後のコーヒーを飲んでいると歳の割りに大人びた少年が入ってきた。
「おはよう、リボーン」
「ああ」
あのころとはずいぶん変わった彼は、いつもこの時間にこの部屋に来る。…ノックもなしに。隣にいたメイドもおはようございます、とリボーンに挨拶した。小さなテーブルへリボーンも席に着くと、メイドがリボーンにコーヒーを渡す。
これもいつもと変わらない朝だ。
いつも朝はリボーンが来て今日の日程の確認やらいろいろと話す。
しばらくして二人で執務室へ向かう。これも大体いつも変わらない。






だが執務室へ行くと、いつもとは違っていた。
だれも執務室にはいなかった。


「あれ、リボーン…隼人は?」
「いねぇな」


いつもならいるはずの愛しい彼の姿が見えなかった。
いつもなら、ここに入ると真っ先に俺に挨拶してくるのに。


「隼人、任務だったっけ?」
「入ってなかったはずだ」


どうしたんだろう…、と俺が悩みながら定位置につくと同時にリボーンがどさっと書類を机に置いた。そんなことで悩んでねぇでさっさとやれ、と俺の目の前の書類から帽子の先っぽしか見えてない彼は言い残して出て行った。






昼になっても書類は終わらなかったが(途中でまた追加が来た)リボーンに食事の許可を出されたので、俺はテラスでランチをとった。今日はほとんどが任務などで出払っているため、いつもは何人かととる食事も一人で食べた。リボーンにも声をかけたが彼も彼で、書類が溜まっているみたいで忙しいと断られた。


いつもなら隼人が目の前にいるんだけどな。


今日も執務室には入れ替わり立ち代り人が入ってきたりしてたのに、彼だけは来なかった。本当に彼はどこに行ってしまったんだろう、と物思いにふけるが考えても到底答えがわからないわけで。しかも仕事は未だに山の様に溜まっていて抜け出して探しに行くわけにもいかず。


「あーっもう!!」


なんなんだよ…と吐き出した言葉は薄い蒼の空に消えた。








夜になっても隼人は来なくて、書類も終わりが見えなかった。
もうやる気も何もおきなくて、俺はへろへろと書類にサインしていた。
「なにやってんだ、ダメツナが」
「…ダメツナっていうなよ」
リボーンがまたノックもなしに入ってきた。
リボーンは簡単に今日のことについて報告し、明日の予定を話す。
これはいつもと同じだ。でもいつもならこの時間は隼人がいて
目の前にあるソファに座って一緒にリボーンの話を聞いてるはずなのに。
明日ある会議について話していたリボーンにリボーン、と話を中断させ


「…隼人は?」


というと彼はチッと舌打ちし、このダメツナがと俺を睨んだ。


「さっき帰ってきてたぞ」
「ほんとに?!」


俺が突然立ち上がった拍子に書類が何枚か落ちたが見てみぬフリをした。
もう今日はいい、行けよとリボーンに言われて俺は執務室を飛び出した。
多分部屋にいると思うぞ、とリボーンに付け足されて俺はありがとう!と叫んだ。








「隼人!」


彼の部屋にノックと同時に入る。
彼は突然のことにびっくりしたようで、トランクから出したシャツを落とした。


「じゅ、十代目…どうしたんですか?」


俺の様子を見た君は、相当おろおろして駆け寄ってきた。
いつもと変わらない君を見て俺はもうこれまで考えてたことなんて吹っ飛んだ。
どこ行ってたんだとか、さ。


「こっちきて」


と、君の手をとってソファに向かう。
座って、と君を半ば無理やり座らせた。手はつかんだまま。
もうはなさないよ。
俺も隣に腰掛けてふー、と一息つく。
十代目?と君は依然はてなマークを浮かべたまま俺の顔を覗き込んでくる。
その視線を絡めて俺がにこっと笑うと、君もつられて笑顔になった。
ああ、もう。


「わっ!」


俺は隼人の手を引いて一緒にソファにダイブした。
赤くなってる君にお構いなしにぎゅっと抱きしめる。
君がやっと察しておとなしく俺に身をゆだねた。




「十代目、あの、」


しばらくして充電中の俺に君は大丈夫ですか?と俺を見下ろした。
さらさらの髪が頬に当たってくすぐったい。


「うん、だめ」


といって俺は隼人にキスした。
昔と変わらず赤い顔をした君が、そうですかとまた俺に身を預ける。
すみません、と一言添えた君に俺はうん、といって。
いつもと同じがこんなに大切だったなんて久しぶりに味わったよ、とつぶやく。
ちょっと違うだけなのにね、
君がいなかっただけでまたリボーンにダメツナって言われちゃったよ。










いつも一緒でいたいよ










俺は、いつもあなたの傍にいます












―――――
ラブラブ2759を目指したんだけどちゃんと反映してるかなぁ?隼人が何してたかとか考えたんだけど、それはまた別の話なんで、気が向いたら…。とにかく依存症なツナ様が書きたかった。常に隼人を傍においとかないとダメツナに戻っちゃうの。(あれ?ディーノと同じじゃね?)だってツナは隼人と一緒にいたいから十代目になったんだもんね。隼人中心の世界。隼人の髪の先まで愛おしい。