ただ思ってるだけ、だけども。(銀→土で)

「もう行くのか」


しん、と静まり返った室内。香るタバコで目を覚ました。
外はまだ薄く霧がかっていて、日も差していないみたいだ。


ああ、とタバコの主は上着を羽織った。
そんな動作ひとつひとつに胸が高まってしまう。
熱を逃がしたばかりなのに、彼を見つめるたびに。
これが惚れた弱みとでもいうのだろうか。
年下の彼に惚れてしまうなんて。


「朝から会議なんだ」


そっかぁ、とまだ彼のぬくもりが残る布団に顔をうずめる。
ここで行かないでだの、嫌だのいっては年下の彼は困ってしまう。
大人な俺はそういう思いを飲み込んで、笑顔で送り出してやらなきゃ。


「いってらっしゃい」
「いってくる」


なんか新婚さんみたいだなーとぼんやり考えていると
彼は足早に玄関へ向かっていってしまう。
行って欲しくないとか、そういうことを思ったわけじゃないけど
俺はつられてか布団から出て彼の後を追った。






「なんだよ」


どうしたんだ?と靴を履き終わった彼は背中を向けたまま顔だけこちらに向けた。
俺は別に…、とホントに理由という理由もないし
自分でも何やってるのかわからなかったからそう呟いた。
ふーん、と彼は言いながら立ち上がってくわえていたタバコを手に取った。
俺は待っていたわけじゃないが
すかさず彼の胸倉を掴んで引っ張って唇を寄せた。




「…どうしたんだよ」


いつもよりは短いキスのあと、年下の彼はびっくりして変な顔をしていた。
それでも元の顔が整っているからなのか、かっこいなーなんて思ってしまう。
自然とにやけそうになる顔を隠すために、わざとにやりと笑ってみせる。




「いってらっしゃいのちゅーだ」


「……………そーかよ」


若干顔を赤く染めた彼はチッと軽く舌打ちして後ろを向いてしまった。
舌打ちされて、照れてるんだなーと思うとうれしくて仕方なかった。
彼は玄関の戸に手をかけてあけた。
少し昇ったのか眩しい日差しが差し込む。


そのせいで見えなかった。




「今日は早く戻る」




そう言ってくれたときの彼の笑顔が。












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書けるもんだね!と自分の才能に酔いしれる。いや、そんなことはありませんけども。いつもコメントくださってるもこちゃんに勝手に捧げます。土銀。いつものよーに銀さんの家にお泊りして、朝早くでていくトシに銀さんが思うこと。文中は銀さん目線でいっぱい銀さんのツンデレっぽいのを入れてみたんだけど…なんかトシより大人だから余裕を見せなきゃっていつも思ってるといいなーって。そんなことしなくてもトシはトシでたいへんなのにね。


そんな感じでいかがですか?