「優しくなんかないよ」

吐いた息は白く、露出した肌がところどころ赤くなっている。
外は銀世界。
朝一番の冷たい空気をまとった獄寺は、目の前の扉が開くのを待っていた。

「ご、獄寺君!こんな寒いのに待っててくれたの?!」
「おはようございます!十代目っ」

玄関からとび出てきた綱吉は、獄寺に走り寄った。
おはよー寒いねぇ、と手をすりあわせる。


***


学校へ向かう道は、ところどころ凍っていて危なかった。
時々綱吉が転びそうになるのを獄寺が助けた数はきりが無いほどに。

手に何かが触れた。
そう思ったとたんに、俺の手は十代目のそれとつながっていた。
ビックリして十代目を見ると、獄寺君手ぇ冷たいねーと、笑顔で言われた。
「このほうが暖かいでしょ?」
俺も寒いしさ、と付け足して手を強く握ったからますますびっくりした。

「十代目は優しいんですね」

俺も暖かいです、って獄寺君がいつもより白い顔で言うからどきっとした。
でも俺は優しくなんかないよ。
いつも君に触れたくて、でも何か口実がないと触れられないような臆病者で。
だから今日が寒くてよかった。





君と触れられるなら、なんだって利用するよ。





―――――

あれ?十代目の背中に何か黒いものが…