時間を止めて 一人にさせないで

どちらからともなく始めたキスに終わりはなく、室内には2人の吐息と時折混じる自分の声が響いていた。
ツナの薄い背中に自分の手の居場所を探していた。
何度も何度も角度を変えて、奪われる酸素を必死に取り戻そうとしていた。
それも見つかって息をする隙間さえも塞がれれば、後はただ、感じるしかないのだ。


彼の唇を、舌を、息を。


それしか感じられない。
それだけを感じることが出来る、この瞬間が永遠にあればいいのに。
そんなことを考えていると、なんだか苦しくなってくる。
酸素が足りないのもそうだが、切なさがこみ上げてきた。


彼を失ってしまったらどうなるんだろうと考えてしまう。


十分に愛されていることは解っているのだ。
愛情が足りないというわけでもない。
別れようといわれているわけでもない。
むしろ、今は夢中でキスし合っている。


なのに、どうして、
涙がこぼれそうになる。


涙をこらえようと背中に回した手に入れられるだけの力を入れた。
ツナは「ん?」と一時中断して唇を離してくれた。


「なに?」
「…いえ、なんでもありません」


そう、と彼は微笑んで俺の髪を撫でた。
大好き、と一言つぶやいて俺の胸に抱きついてくる。
俺も好きです、と彼のやわらかい髪を撫でた。


その笑顔に、安らぎを得た気がした。