16話

部屋に入ってドアを閉めてもまだ誰かに見られているような気がした。
でもこの部屋の窓は全てカーテンできっちり閉めてあるし、ほかに覗けるような隙間はない。
きっとさっき玄関を閉めるときに感じた鋭い視線の印象が焼き付いて離れないだけだ。


それよりも、隼人だ。


部屋に連れてきたはいいけれど一向に俺のほうを見ようとしない。
肩が震えてる。
きっと涙をこらえてるんだ。
俺は隼人に酷いことをした。
たった一人の恋人なのに不安にさせてしまった。
いつもやってから気づくんだ、こんなことするんじゃなかったって。
何があっても君にこんなこと、するべきじゃなかった。


「隼人、ごめん」
「…」


「あの時、キライって言ったのは嘘だ」


隼人は何も言ってくれない。
仕方ないので俺はこのまま続けることにした。
言い訳にしかならないけれど、このまま真実を告げないまま終わらせたくなかった。
こんなのエゴでしかないか。


「そう言わなければいけなかったんだ」

「あの時は、監視されていた」

「かん、し…?」

隼人がこっちを向いてくれた。
俺はうん、と頷いてから隼人に近づいた。

「だからあの時はそう言うしかなかった」

「さっきも本当はあんな人目につくような所で君を抱きしめてはいけなかった」


「でももうやめるよ」

隼人はわからないといった表情で俺を見つめているけど、俺の言葉を一字一句聞き逃さないようにしているみたいだった。
俺は隼人を抱きしめようとして、上げかけた腕を下ろした。

「…じゃぁ、十代目はこれまで」
「ある組織に脅されていた…今もだけどね」
「そいつらが十代目を監視していたってことですか?」
「うん」
「じゃぁ、俺のことは…」
「今も今までも、ずっと、愛してるのは君だけだ」


告白してすぐに隼人が抱きついてきた。
煙草の苦い香りがする。
俺はぎゅっと、痛いくらいに抱き返した。

俺はずっとこのぬくもりを待ってたんだ。
なによりも大切なのは君なのに。
やっぱり君が居ないと俺はダメツナのままだな―――。



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エロだとか言ってたのに引き伸ばし。
次がエロなので、次回は18話から。