15話


「…あ、あの、十代目?」


「なに?隼人」


「…いつまでこうしているおつもりでしょうか…」


「俺の気が済むまでv」


「…」


十代目に嫌われていないみたいなのはよかったけれども。ツナに抱きしめられながら隼人はそう思った。
しかしここはボンゴレの屋敷の正面玄関だった。今は夕暮れ時で人通りもなく、遠目からでは男2人が抱き合ってるなんて見えないだろうけれども。それでも恥ずかしい、と隼人は辺りに注意を払っていた。それに、あの婚約者やその側近にでも見られてしまったらどうするおつもりなのだろうか、と。
こんなところでこんなことをしているのは、実はとても危険なんじゃないんだろうか?
「あ、あの、十代目、そろそろ…」
「…わかったよ」
といってツナはぱっと、どこか名残惜しそうに隼人から離れた。ご丁寧に頬にキスまでしてから。
本当にこの人は解らない。
隼人は、ツナの瞳を見ていて今までのもやもやしていた気持ちがどうでもよくなってしまいそうな気がした。しかしそれに気づいてツナが隼人に嫌いといったことを思い出す。
散々無視されて、これだけで許すなんて駄目だ!


「隼人?」
俯いて今までのことを考えていた隼人を覗き込むようにしてツナのやわらかい髪が額に当たった。
「……めです」
「え?」
「駄目です!」
隼人はツナの胸を押して距離をとった。そして爆発するように、言ってしまった。

「やっぱりだめです!俺…もう貴方がわからない!!それなのに…!」


隼人がこんなに子供みたいに大声上げたのは久しぶりだった。涙が溢れてきそうだったのでとっさに後ろを向いてそれを隠した。
もう駄目だ、こんなコトいうはずじゃなかった。もっと冷静に話を聞こうとしていたのに。
「隼人、」
「何でっ…無視してた、んですか?!な、んで急に、俺以外の人と?!なんで…!」
「…ごめん」
「…それに、俺のことを…」


嫌いって


自暴自棄になっていた隼人にツナがとめるように抱きついた。隼人はそれを振り払おうとしたがツナの力が思ったより強くて、それはかなわなかった。ツナは暴れる隼人の名前を何度も呼んで落ち着かせようとした。
「はやと」
「いま、さら…」


「…全部、話したいんだ。これまでのこと。だから、」


とりあえず部屋に行こう?と、ツナに言われて隼人は断れなかった。もう一度彼を知りたくて。彼を嫌いになったんだと勘違いしたまま別れたくなかったし、何より話がしたかった。そうすればこれまでのことも嘘だったように思えるかもしれない。


推測ではなく、真実が欲しい。


隼人が小さく頷くのを確認してツナは屋敷の扉を開けた。隼人を通してから自分が入って、扉の向こうを一瞥してから閉めた。





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もう解らないのはこっちだ。
ちゃんと繋がっているのかどうか…不安になってきたじゃないか。