12話

「……いま、なんて?」


ボンゴレを辞めさせて下さい、と」


うそだ
そんなの


きこえない










最近朝が来るのが辛い。自分では頑張っているはずなのに、なぜか空回りしてしまったりするからだと思う。それに朝、隼人が部屋に来なくなった。コレはきっと気のせいなんかじゃない。前までは、あの婚約者騒動が起きるまでは隼人が朝迎えにきてくれていたし、そうでない場合は起きたら隣に隼人が居た。もうかれこれ何日も隼人を抱いてない。でもまだだ。まだダメなんだ。ちゃんとしないと、永久に隼人に逢えなくなってしまうかもしれないんだ。


確かに俺は今回のことで隼人と距離をとっていた。でもそれは決して俺の本心じゃなくて…。でも言わなきゃ伝わらないとも知ってるけれど。察してくれなんて無茶なことは言わないけど。でも


「……だめだ」


「っ……どうしてですか」
「ここはマフィアだよ?そんな簡単に辞めさせられるわけないじゃないか」
「それは……制裁でも何でも受けます」
「いいの?……死ぬことになるよ」


こうすることでしか隼人を引き止められない自分に腹が立つ。何言ってるんだ。いくら隼人みたいな幹部だって辞めたければ笑顔で送れるように善処するのに。元々ここがマフィアだからって殺すなんて、俺はしない。新しい人生を送りたいなら、その人にとっての幸せがそこにあるのなら、それを手に入れて欲しい。ここで上手くいかないのなら、いくらだって新しい就職先を探してあげたい。だからマフィアを辞めるのに制裁はいらない。少なくともボンゴレではね。

それに隼人を殺すなんて、誰に頼まれたって俺には出来ない。そんなの君が一番よく知ってると思うけどな。


「……それでも辞めたい?」
「十代目………」


こんな苦しそうな君の顔、いままで見たことない。苦しそうと、一概に言っていいんだろうか。悲しそうな、苦しそうな…
全部俺のせいだ。


「…Sì、と言っても許さないけどね」
「………」








「とにかく、十代目として辞めることは許さない。わかった?」


「……Sì」


ぱたん、と扉が閉まる音がして隼人が出て行った。今思えば理由も聞かなかったな…どんな理由であれ、隼人がここから居なくなってしまうなんて、笑顔で見送れなんて、絶対出来ないけれど。さっきはかなり焦ってたんだ。顔には出さないようにして結果、あんなに強く言ってしまったけれど。隼人が辞めるなんて言い出すなんて、俺にはどうやってでもそれを止めること以外に何も思いつかなかった。なんで?って思う前に、そんなの駄目だって思ったんだ。それにきっと理由は今のことだろう。直感でしかないけれど。


でも今はただ、俺のことを信じてもらうしかない。
こんな、どういえばわからないのに俺の声が響いて欲しいなんて。
自分でもあきれるな












だってあの頃の俺は獄寺君と一緒に居たいから
ただそれだけの素直な気持ちだけで
ここにいるんだから