昨夜は眠れないと思っていたが、結局疲れが勝って眠ってしまった。いや、いいことなんだろうけれども。でも結局あの人をすきという事実は変えられないまま、何の解決も導き出せないまま明日が来てしまった。昨日はあんまり冷たくされなかったけれども、今日はどうだろう。もともとそんなに人に対してキャラを変えられる様な人じゃないと思っていたけれど、本当は…?


***


ボスの執務室に向かって廊下を進む。
毎朝俺は、まず玄関へ向かい十代目宛ての手紙をチェックし、必要なものだけを持って十代目の私室へ向かっていた。そこにはリボーンさんと十代目が食後のコーヒーを楽しみながら重要なことを話している、という風景があった。俺が来ると十代目とリボーンさんは朝食を終えて、俺と3人で執務室へ向かう。といってもボスの私室と執務室はつながっているので部屋から部屋に移動するだけだが。
しかし昨日も今日もその日常を続けていなかった。俺は手紙をもってそのまま執務室に向かっている。本当は執務室にだって行きたくないが、右腕である以上それは避けられない。俯き加減で廊下を歩く。


***


コンコン
「どうぞー」
「失礼します」
十代目の声で俺は俯いていた顔を上げ、執務室へ入った。リボーンさんは不在で、部屋には十代目だけだった。気まずい。
「おはようございます。今日の手紙です」
「おはよう。ありがとう、隼人」
「……………」
「……………」
気まずい。とても。俺はまともに十代目の顔が見れなくてソファに重い体を沈めた。
「隼人、大丈夫?」
「っえ?!だ、大丈夫って…」
「君、今ため息ついてたから」
ため息なんてついただろうか。きっと無意識のうちに出てしまったに違いない。ああ、どうしよう…。そう思っていたら俯いた顔の前に高級そうな靴が見えた。顔を上げるとそこにはいつもの恋人の笑顔。


そんな、ホントはどうしたいんですか…


「熱はないみたいだけど、疲れてるなら休んでてもいいんだよ?」
「…いえ、大丈夫です」
「そう…。ならいいけど」
「それじゃぁ俺、会議があるので失礼します」
そう言って俺は早々に立ち上がりドアに向かう。もうこれ以上心をかき乱さないでほしかったから、もうここには居られない。いま、十代目とふたりきりなんて出来ない。早く早く、と焦る気持ちで手がドアノブに触れた瞬間だった。


「隼人!」


俺は呼ばれて思わず振り向いてしまった。ここで振り向いちゃいけなかった。振り向いて彼を視界に入れちゃいけなかった。そうすればまだ―――


「無理しないでね」




優しそうな笑顔


悲しそうな瞳


ああ、やっぱり


この人が俺の好きになった人だ




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更新がずっと止まっていてすみませんでした!(ジャンピング土下座)
久々過ぎて隼人の気持ちが私とすれ違いな感じです。この話…、普段の彼らならただのいちゃこきストーリーなのにね。次で急展開の予定です。